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17.いきなりとんでもアレンジ講座です。


音源
IveGrownATHF.wav.MP3
IveGrownATHF_karaoke.wav.MP3

IveGrownATHF.wav
IveGrownATHF_karaoke.wav

譜面

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今回、ご用意させていただきました曲は、
I’ve Growing Acustom To His Face
というスタンダード曲が題材です。
この曲はミュージカル「マイフェアレディ」の中の曲で、
本来男性が歌っていた曲、
女性キーにアレンジしたのでHerがHisになります。
本来スタンダード曲のほとんどはバラード調です。
今現在の私たちの演奏するテンポは超速すぎです(笑)。

このアレンジは、私が20歳のとき、音楽学校の課題として提出、演奏、指揮、録音
したものですが、当時の録音はもうカセットテープですでに聴けない状態。
打ち込み再現いたしました。

私の通っていた音楽学校は、
ビッグバンド、ゴスペル、カントリー、ラテン、コメディー、
トムとジェリーもの、小オーケストラでディキシーやってみるとか、・・・
毎週、曲、長さ、編成(だいたい20人から40人)の課題が与えられ、
アレンジして、写譜して、現地ミュージシャンに演奏してもらって、自ら指揮をして
という生活。

・・・毎週ですよ、ほかの課題もありますからアレンジに一日かけられれば良いほうです、
写譜に丸一日かかります、当時はパソコンに頼れない時代でしたから。

さて、色んな音楽が融合されて今の音楽が出来上がっています。
まあフュージョンということになりますね。
それぞれの国、地域、個人の主義主張によっても、やり方の幅がずいぶんあります。

融合ものといえば、ジャズ、ラテン、クラシック、民族など・・・。
リズムに変化をつける場合、
メロディをどんどん変化させる場合、
キメ、ユニゾンが多い場合、
変拍子を使う場合、
抽象的な場合、
結果的にある程度複雑にした音楽を良しとして楽しんでいるのではないでしょうか。
つまりある程度複雑で、いろいろなアイディアが盛り込まれている音楽が面白いと。
ただ私の考え感じ方は、音楽のどの部分をフォーカスしているかの問題で、
それぞれの音楽が劇的に違う、とか変化しているとかはあまり感じません。
音楽は音楽。

そんな融合中心主義の産物で私がかなり興味を持ったのが、
イージーリスニングという分野です。
高級デパートのBGM。
お休み前の音楽。
魅惑のサクソフォーン。
映画音楽。
まさに、独立した価値がまったくないような音楽と思われています。
しかし!
よく見てみると実にいろいろなものが融合して、
複雑な構造をしています。
(変拍子、ラテンなどにフォーカスしなければこうなるのだろうな。)

だいたいオーケストラ編成をつかうことが多いのでオーケストレーションが主体となります。
オーケストレーションというのは音符をどの楽器に割る振るかだけの問題です。
たいしてむつかしく思わないでください。
しかもドラム、ベース、ピアノ、ギターなどのバンド編成で使われる楽器も入ってきます。
ここですでに融合ですね。

きっちり譜面によって指示されたものを演奏する人と。
ある程度任されたものを演奏する人が共存しています。

さて、編成は
フルート二人
オーボエ
クラリネット
ホルン
トランペット二人
トロンボーン二人
バストロンボーン(チューバでも可)
ナイロン弦のギター
ローズ
ウッドベース
タンバリン
クラベス
ハープ
バイオリン12人
ビオラ4人
チェロ2人
です。

まず、この曲をアレンジしなさいと渡され、(人それぞれ違いました)
ボーカルものによくあるルバートをオーケストラ相手でもやりなさい。
というものでした。
それって、ボーカル聞きながら棒でそれにつけるのか・・・
という当時の私にとってはとてつもない注文でした。
胃に穴が空く思いで本番を迎えましたが、
なんと、良くも悪くも私の棒にピッタリくっついてくるではありませんか。
最後はうれしい鳥肌に変わりよかったですが。

楽器ごとの特徴を説明しますね。
スコアもありますので参照してください。
何が起こっているか知るだけでもおもしろいです。

オーボエ、ホルンは単旋律をとってもらう担当にしたので、
独立した扱いをしています。
ろうろうと吹いてもらうだけです。
フルート、クラはセクション扱いです。

実はこの木管たちがくせもので、書くときに一番の注意が必要です。
音域によって鳴り方がまったく変わってしまいます。
ここで書いてあるのより五度ぐらい低い音域で書かれていると、
ほぼ他の楽器に埋もれて、まったく聞こえない状態になります。

今の時代となってはマルチにマイクが立つので、
気にする人はへりました。
でも知っておいたほうがいいです。

最後のほうにフルート、クラの細かい動きがあります。
もともと得意なはずですが、こういうのは苦情が来る事もあります。
同じ楽器に複数の奏者がいれば上行フレーズは一人目、
下行フレーズは別の人というように振り分けて、息継ぎ、指順などの負担を減らすこともできます。
着地、始まりは拍頭のほうが本当はうまくいきます。
たくさんいるほうが楽にいろんなことができます。

金管はわりとヒマでしょうか。
言い換えれば一番おいしいところに仕事があるともいえます。
包み込む力強さ、白玉役で、オープンなボイシングです。

ギター、ピアノはコードや簡単なメロディー譜から自由に弾いてもらうのが目的です。
ですから人選もアレンジの一つ。
だいたいすばらしい人はマイナーかメージャーかセブンスか簡単に書いておけば、
勝手にすばらしくなります。これが現実です。
場違いの人が担当したら大変です。
自由に弾いてもらうところはシンプルなコードだけで、テンション、読み替えなどは自由。
他のセクションと兼ね合いのあるところは、テンションの種類まで表記する必要があります。
濁った響き、不本意な響きにならないよう にこうします。
これはわたしが弾いていますが・・・・。

今回ドラム奏者は無しです、クビです。
残念なことに世の中の音楽でのドラムセット利用率は低いと思われます・・・
タンバリンとクラベスのみです。
(しかしタンバリンに張ってある皮ってのは意味があるのか???)・・・失礼。

ストリングは意外と楽。
との音域に行っても同じように鳴るし、
音色もさほど変わりません。
高いほうはハーモ二クスも使えるし、
低いほうはもうベートーベンの時代から5弦ベースは使われています。
激しい跳躍も問題なし。
オクターブ半飛んでもべつに怒られません。
思いついた音を適当に割り振ればOKでしょう。
上げ弓下げ弓はほぼまかせておけます。

このアレンジでは、弦楽4重奏でも成立するように書いています。
どういうことかというと、ダブルストップ(重音)を駆使して音数を稼いでいます。
(これは運指の機能に関する知識がちょっと必要)
最後の1stバイオリンを分けているのは、
ダブルストップで不可能ではないのですが、
色彩感の問題です。

それぞれのパートはなるべく独立したラインを動くようにしています。
ただのコード弾きのようなものは面白みが無いからです。
発音数の制限ももちろんありますが。
9thとか表現するとき3rdと同時に鳴らすより、
ひとつのラインで9thから3rdと動かすほうがきれいです。
クラスターサウンドを望むとき以外はどんどん省略したほうが良いです。
倍音列で暗示できるもの、直前に鳴っている音はそれも含まれるとして、
省略してしまいましょう。
しかも半音階でラインを繋げることもよくあります、
適度なら、ロマンチックであります、が、
これをやりすぎるとマーラーの出来損ないみたいになります。
そうそうポルタメントでもありですよね。

諸先生方によく言われましたが、
簡単に鍵盤で手弾き出来てしまうようなことを書くのは、
恥ずかしいとされています。(作編曲家的にです。)
それぞれ独立した楽器なのですから当然です。
それぞれのパートは結局二段譜に落とせますが、
それを手弾きするのは不可能で、
指がもつれてしまうぐらいなものほど面白いとも言えます。

てなわけで、
何か単なる自己の表現というより、
「音の組み合わせ的な音遊びの要素」のほうが強いのではないかとも思います。
変拍子の好きな方が16分の23拍子とかやるのとたいして変わらない気がします。

とりあえず今回はこのへんにします。
ありがとうございました。

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